富山の置き薬という文化について知る

富山県は薬に関して独特の文化が存在しているのも魅力の一つです。その文化から生まれた画期的なシステムは、全国的に取り入れられ広く活用されています。

通常、薬というものは薬局で目的の薬を購入して使用したり、病院で医師の処方箋を受けて薬局で処方してもらう、という形式をとることが一般的です。しかし富山県では、薬に関して「おきぐすり」という独特の文化が存在しています。これは、薬種業者が各家庭に薬をもって訪れ、様々な種類の薬を各家庭に配置しておくというものです。利用の仕方は、風邪や腹痛を引き起こした際に、必要となる薬を配置薬から選んで使用し、後に使用した分の代金を薬種業者に支払うという仕組みになります。

利用者は、使った分だけの薬の代金を支払うことになるので、無駄な代金を支払う必要もなく、急病であっても薬が置いてある安心感が存在しています。薬種業者も薬の無駄な廃棄を減らすことができるとあって、両者にとってメリットのある仕組みと言えるでしょう。この仕組みが生み出されたのは、富山において「先用後利」という考えが根付いていることが理由として挙げられます。
先用後利とは、使ってもらうことが先で、利益は後から考えるという意味です。富山県では、もともと江戸時代に財政難解決のために薬の製造販売に力を入れて発達していましたが、この考えにより薬文化が確立していったと言えます。また、明治時代になると廃藩置県が起こったことにより、薬種業は藩という後ろ盾を失い、薬売結社を発足させました。その考えを今においても貫いているのでしょう。